先天性無歯症の治療薬研究が進んでいます
先天性無歯症とは
ご本人あるいはご家族の方で、次に当てはまる方は「先天性無歯症」かも知れません。
- 15歳になっても乳歯が残っている。
- 乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこない。
- 歯の数が6本以上少ないと言われたことがある。
生まれつき(遺伝的に)歯の数が少ない方は珍しくありません。本来(智歯を除き)永久歯は28本ありますが、この数が少ない永久歯の先天性欠如は 10.1%に見られたとの報告があります。
その中でも、6本以上の歯が欠損している場合は遺伝が大きく関係していると考えられ、その確率は全人口の0.1%と言われています。
歯は、「歯胚(しはい)」という「歯の芽」が成長して萌出してきます。歯胚は成長するとX線検査で確認できますので、永久歯への生え替わりの時期に早めに検査を受け、永久歯の数を確認しておくことが大切です。
もし先天性無歯症である可能性がある場合は、当医院から、レジストリ(後述)を行っている医療機関にご紹介することもできます。
歯の発生を阻害するタンパク質の発見
せっかく歯胚ができそうになっても、この歯胚が成長できないと歯が生えてきません。近年の研究で、この歯胚の成長を阻害しているタンパク質が見つかったのです。
以下は、「トレジェム・バイオファーマ」社のウェブサイトからの転載です。
通常であれば、乳歯と永久歯のあとに歯が生えることはありません。しかし、2007年、通常よりも多くの歯が生えているモデルマウスを発見。そのマウスは歯の成長を阻害するタンパク質「USAG-1」が欠損しており、歯胚が過剰に育っていた状態でした。
つまり、歯の発生は、歯の成長を阻害するUSAG-1によって制御されていることが判明したのです。
この阻害因子を抑える「抗USAG-1抗体」を開発したのが、こちらの研究機関です。
先天性無歯症へのアプローチ
成長しなかった永久歯の歯胚に抗USAG-1抗体を投与して成長を促し、新しい歯を発生させるのが最初のアプローチです。
さらには、後天的に(むし歯や事故などで)失われた永久歯の代わりとなる「第三の歯」を生やす研究も行われています。
臨床試験が始まります
北野病院医学研究所のウェブサイトや2024年5月の日経新聞によれば、2024年9月からFIH試験(第1相臨床試験)のStep1(健常者男性成人を対象にした漸増投与による安全性確認と至適投与量同定)が、京大医学部附属病院で開始されているようです。
今後のFIH試験のStep2では、レジストリ(治験対象者候補)登録者の中から4本以上先天性欠如歯に該当する2歳〜7歳の小児が対象となり、ついで対象を拡大していく計画で、順調に進みますと2029年に臨床試験を終え、承認を得たいとしています。
観察研究が進みますと、先天性無歯症の治療を皮切りに、後天的に歯を失う患者さんに対する歯科治療にも変革が起きる可能性もあります。今後に期待したいと思います。
